病院運営においてなぜベッドを埋めろと口うるさく言われるのか

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病院勤務をしているとベッドを埋めて下さい、とうるさく言われます。また、かなり勤務を頑張ってもまだ赤字、といわれてどれだけ働けばいいんだと思うこともあるかもしれません。
なぜ、病院はベッド稼働を高く維持しなければならないのでしょうか?

その疑問に応えるためには
労働集約型企業と資本集約型企業について知る必要があります。まずはそれぞれの特徴をまとめてみましょう。

労働集約型企業

労働集約型企業とは、事業活動において、資本よりも労働力への依存度が高い企業のことです。病院という文脈では

  • 労働コストの割合が高い: 売上や生産にかかるコストの中で、従業員の人件費が大きな割合を占めます。(医師や看護師など特殊なライセンスを持った人が必要なので給与が高い)
  • 人のスキルやノウハウが重要: 提供する製品やサービスの質が、従業員の技能や経験に大きく左右されます。
  • 生産性の向上は人の能力開発に依存: 生産性を高めるためには、従業員の教育や訓練、モチベーションの維持などが重要になります。

と言った要素が挙げられます。

資本集約型企業

資本集約型企業とは、事業活動において、労働力よりも資本(設備や機械など)への依存度が高い企業のことです。主な特徴としては以下の点が挙げられます。

  • 資本コストの割合が高い: 生産設備や機械の導入・維持にかかる費用が大きな割合を占めます。(CTなどの検査機器がその代表です)
  • 高い初期投資が必要: 事業を開始するために、高額な設備投資が必要となる場合が多いです。
  • 生産性の向上は技術革新や設備投資に依存: 生産性を高めるためには、最新技術の導入や設備の更新などが重要になります。(最新の手術機器なども必要ですし画像機器も定期的な更新が必須です)

病院は労働集約型と資本集約型の両方の要素を持つため、病棟稼働率を高く維持しなければ収益が上がらないのですね。その理由をまとめます。

病院における労働集約型と資本集約型の要素

病院の運営には、以下の両方の要素が強く関わっています。

労働集約型要素:

  • 医療従事者の人件費: 医師、看護師、薬剤師、技師など、多くの専門職の人件費が運営コストの大きな割合を占めます。
  • 人的サービスの提供: 患者へのケア、診断、治療など、質の高い医療サービスは、医療従事者の知識、技術、経験に大きく依存します。

資本集約型要素:

  • 医療機器・設備の導入・維持費: CT、MRI、手術室設備、病室設備など、高度な医療を提供するためには高額な医療機器や設備が必要です。これらの導入費用だけでなく、維持費、減価償却費も大きな負担となります。
  • 施設維持費: 病院の建物自体の維持管理費(光熱費、清掃費、修繕費など)も多額になります。

病棟稼働率が収益に大きく影響する理由

上記のように、病院は多くの固定費(人件費、医療機器・設備の維持費、施設維持費など)を抱えています。固定費は病棟稼働率と関係ないため稼働率が低いと、これらの固定費によって収益があがりません。稼働をあげていくとそれによって収益が生まれ、損益分岐点を超えると差分の利益は急速にあがります。そのため少しの稼働率の差が大きな収益の差を生むことになるのです。

まとめると、病院は多くの固定費を抱える一方で、その収益の多くを入院患者の受け入れによって得ています。したがって、病棟稼働率を高く維持することは、固定費を効率的に回収し、労働力や医療資源を最大限に活用するために不可欠です。また、少しの稼働率の差が赤字黒字の大きな差になることになります。このため経営陣は数%の稼働に必死になっているという背景があります。

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