ERにおける一次性頭痛の考え方

救急医学

ERにおける一次頭痛の考え方

SAHと髄膜炎は除外しなさい、というのは救急医療における原則ですが仮にそれらが上手く除外されたとしたらみなさまどうされていますか?

緊急性疾患は除外されているので痛み止めで様子を見ましょう、と言っているかもしれません。中には片頭痛や緊張型頭痛などがありますと説明していることもあるでしょう。では片頭痛と緊張型頭痛はどのように鑑別すればよいのでしょうか。今回は代表的な一次性頭痛である緊張型頭痛と片頭痛の鑑別に関する話です。

まずは一般論として頭痛ガイドラインを参照してみましょう。

頭痛ガイドライン2021年版はオープンアクセスで公開されており、その中でいくつかのCQが掲げられています。その中で
CQ1:頭痛の分類は国際頭痛分類に準拠すること
CQ2::二次性を考慮すべきレッドフラッグとして
発熱を含む全身症状
新生物の既往
意識レベルの低下を含めた神経脱落症状又は機能不全
急性又は突然発症
50歳以降の発症
頭痛パターンの変化または最近発症
姿勢による変化
くしゃみや咳、運動による誘発
乳頭浮腫
痛みや症状が進行する
妊娠または産褥期
自律神経症状を伴う眼痛
外傷後
免疫不全
鎮痛薬や薬剤新規使用に伴うもの
が挙げられています。

今回は2次性の除外に関しては深く触れませんので上記に関してはまた別のスレッドでまとめます。

まず極論から入ってしましまいますが、
緊張型頭痛はER受診をしない
と原則考えるべきと考えています。

つまりERで緊張型頭痛と診断することは極稀ということです。一般的には最も有病率が高いとされる頭痛なのになぜ?と感じる方もいらっしゃると思いますが理由は以下に集約されます。つまり、
①ER受診は患者にとって特別な受診行動である。(受領行動に受診閾値がある)
ということです。

緊張型頭痛の典型的な例は診断基準にもある通り
強さが軽度から中等度で日常生活動作による増悪がない
ことが特徴になるためあまり日常生活に支障をきたしません。また反復することが多いため「いつもの頭痛」として自己対応も確率されていることが多い疾患です。なので仮に発作が起きたとしても病院受診をしようとしないことが多い疾患と言えるでしょう。

一方でERに時間外で受診をするという行動は患者にとってハードルが高く症状が一定以上の強さがないと受領行動が惹起されないのです。この閾値は日中にかかりつけに行くことや薬局で痛み止めを買うよりも通常は高いものになると言えます。

上記の2つを考えると、(言ってみれば慣れている)緊張型頭痛で(いつもと違う救急外来受診という)受領行動は取ることが無いと言えます。
そのため緊張型頭痛はER受診をしないと考えたほうがよいのです。

ではほぼ片頭痛として説明がつくのか、という話になります。
両側性
拍動性でない
などで片頭痛ではないというコンサルテーションを聞きますが果たしてそれでよいのでしょうか?

じつは両側性や拍動性でない(=締め付けられるような)という頭痛の場所や正常だけでは片頭痛を除外するのは難しいことが知られています。
光音過敏
嘔吐
日常生活動作での増悪
が診断特性は高いと言われているのでこちらを手がかりにするとよいでしょう。

(さらにマニアックな話としては吐いたりする緊張型頭痛もあるのですがこれは後日加筆します)

最後に、それでもTTHを考えたいと思ったらER受診に至った別の理由を考慮するようにしましょう。

すなわち、受療閾値や痛みを増悪する、
抑うつなどの精神的な因子
明日なにか重要なイベントがあるなどの社会的理由
ですね。これらにアプローチすることは患者ケアを向上させるヒントにもなるかもしれませんね。

2次性を除外した先の頭痛診療ができるようになるとER診療の質が大きく上がります。頭痛は遭遇頻度の高い宗祖でもありますからぜひ勉強してみてください。

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